配達中に自転車がパンクしたら|その場の判断と、パンクを減らす方法
料理を持ったまま、後輪がぺしゃんこになる。自転車で配達をしていて、いちばん血の気が引く瞬間です。しかもパンクは、雨の日や、荷物が重い日や、急いでいる日に限って起きます。
この記事は2つに分かれています。前半は「起きてしまった今日、どう動くか」。後半は「そもそもパンクを減らすには」。
先に結論を書くと、パンクの多くは運ではなく、空気圧が足りていないことが引き金です。そしてママチャリでいちばん普通に付いている「英式バルブ」では、空気圧を正しく測れません。ここを知らないまま「ちゃんと空気は入れてる」と思っている人が、いちばんパンクします。
1 パンクした瞬間 — 自転車より、預かっている荷物が先
パンクに気づいた瞬間、多くの人が真っ先に自転車を見ます。でもいま自分が持っているのは、他人の食事です。順番はこうなります。
パンクしたまま走ると、チューブだけでなくタイヤやホイール(リム)まで傷めることがあります。乗らずに押します。数十メートルでも、車道の真ん中で止まるより歩道の端に寄せるほうが先です。
ここで判断が分かれます。温かい料理は、時間が経つほど価値が下がります。宅配便の荷物なら多少遅れても中身は変わりませんが、フードデリバリーは違います。
自分で判断して勝手に離脱しないのが鉄則です。Uber Eatsも出前館も、アプリ内のヘルプからサポートに連絡できます。「車両トラブルで配達を継続できない」と伝えて、指示を仰ぎます。
徒歩10〜15分程度で着く距離なら、押して歩いて届けてしまったほうが早いことがあります。判断に迷ったらサポートに聞きます。
出前館には「トラブルカウント」と呼ばれる管理のしくみがあると説明されています。車両トラブルによるキャンセルでもカウントされる場合があるという話が配達員側から出ており、連絡が遅れるほど心証が悪くなるのは間違いありません。気づいた時点ですぐ連絡する。これが結果的にいちばん傷が浅くなります。
※サポートの連絡先・対応の内容はサービスや時期によって変わります。アプリ内のヘルプから最新の案内を確認してください。評価とクレームのしくみもあわせてどうぞ。
2 直す・押す・帰る — かかる時間とお金を先に知っておく
配達を切り上げたあと、3つの道があります。その日のうちに走り出せるかで選び方が変わります。
| 選択肢 | かかる時間 | お金 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 自転車屋に持ち込む | 店の混み具合しだい。待ち時間が読めない | 下記のとおり | いちばん確実。近くに店があるなら第一候補 |
| 自分で直す | 慣れて20〜30分。初回は1時間近く見る | チューブ代(数百〜2千円台)+工具 | 家に帰ってから。路上での作業は現実的ではない |
| その日は帰る | — | 0円(ただし稼働時間を失う) | 夜遅い・雨・店が閉まっている |
修理代は「穴をふさぐ」か「チューブごと替える」かで大きく変わります。サイクルベースあさひの公表している修理工賃(シティサイクル)は次のとおりです。
ここが配達員にとって痛いところです。自転車は荷物の重さが後輪にかかります。配達バッグを背負っていても、リアキャリア(荷台)に積んでいても、重さが乗るのは後ろです。つまり、いちばん傷みやすい側が、いちばん工賃の高い側ということになります。
※金額は執筆時点でサイクルベースあさひが公表しているシティサイクルの工賃です。店舗・自転車の種類・状態によって変わります。他のチェーンや個人店では料金体系が異なるので、持ち込む前に電話で聞くのが確実です。
3 パンクは運ではない — 引き金の多くは「空気圧」
「釘を踏んだ」パンクは、実はそれほど多くありません。配達で起きるパンクの多くは、空気が足りない状態で段差に乗り上げたことが引き金です。
これを「リム打ちパンク」と言います。タイヤの中の空気が少ないと、段差に乗り上げた瞬間、タイヤとチューブが「段差」と「リム(ホイールの縁)」に強く挟まれます。するとチューブに2つ並んだ穴が開く——ヘビに噛まれた跡に似ているので「スネークバイト」とも呼ばれます。国民生活センターもリム打ちパンクについてテスト結果を公表しており、空気圧が不足しているほど起きやすくなると説明されています。
🚨ママチャリに付いている「英式バルブ」では、空気圧が正しく測れません。これは空気入れが悪いわけでも、測り方が下手なわけでもなく、バルブの構造上そうなっているという話です。
英式バルブは虫ゴムという小さなゴムの部品が弁の役割をしています。この構造のせいで、ゲージが拾うのはバルブの入り口付近の圧力であって、タイヤの中の圧力そのものではありません。サイクルベースあさひも公式の解説で、「バルブの入り口付近の圧(負圧)を測定するため、タイヤの実際の空気圧より高めに表示される」と説明しています。つまり、数字を見て「入っている」と思っていても、実際は足りていないことがあるということです。
対策は2つあります。ひとつはエアチェックアダプターという部品で、英式のチューブに差し込むだけで米式(自動車と同じ形式)に変換できます。もうひとつはスーパーバルブという、虫ゴムを使わない構造のバルブに交換する方法です。あさひの実験でも、スーパーバルブは米式バルブと同等の測定精度が得られたと報告されています。
そして、あさひの解説にはこう書かれています。——「一度、数字通りの空気圧を知り、以後は手の感覚で適正に近い空気圧を入れてあげれば」よい、と。毎回きっちり測る必要はありません。大事なのは「正しい硬さを一度、指で覚える」ことです。
4 出発前の3分でできること、そのための道具
パンクをゼロにはできません。でも減らすことはできます。走り出す前にやることは3つだけです。
① タイヤを指で強く押す。親指で押して、ほとんどへこまないのが適正です。少しでもぐにゃっと沈むなら空気が足りていません。前輪より後輪を必ず確認してください。荷物の重さが乗るのは後ろです。
② タイヤの接地面をぐるっと見る。ガラス片や小石が刺さったまま走ると、時間をかけてチューブまで届きます。刺さっているものを見つけたら、その日のうちに抜く。パンクしていなくても抜きます。
③ 段差の手前で、必ず減速する。リム打ちパンクは段差を勢いよく越えた瞬間に起きます。歩道に乗り上げるとき、斜めに入らず、できるだけ直角に、ゆっくり。これだけでかなり減ります。
道具の話をします。買うのは2つだけで、しかもこの2つはセットで意味があります。ゲージ(空気圧計)が付いた空気入れを買っても、英式バルブのままではその数字が当てにならない——これが3章の話でした。だから変換アダプターとセットで初めて機能します。以下は執筆時点で販売ページに記載されていた内容で、価格・仕様は変わります。購入前に必ず最新の表示をご確認ください。
パナレーサー ワンタッチポンプ BFP-02AGEZ2
自転車のタイヤ・チューブで知られるパナレーサーのフロアポンプです。選ぶときの条件はひとつ、ゲージが付いていること。感覚だけで入れていると、たいてい足りません。
ワンタッチ式の口金なので、バルブに差してレバーを倒すだけで固定できます。毎日使うものは、この「面倒くささの差」がそのまま続くかどうかを決めます。
もっと安いものでも構いません。大事なのはメーカーではなくゲージが付いていることです。ただし本体だけでは足りない、というのが下の話になります。
パナレーサー エアチェックアダプター ACA-2(2個セット)
これが3章の答えです。英式バルブに差し込むだけで米式(自動車と同じ形式)に変換され、ゲージの数字が信用できるようになります。チューブごと交換する必要はありません。
2個セットなのが重要です。自転車のタイヤは前後で2本あるので、1個だけ買うと片方しか管理できません。
1,000円かからない部品ですが、これが無いままゲージ付きポンプを買っても、表示は実際より高めに出ます。「入れているのにパンクする」の正体は、たいていここです。
※空気入れもアダプターも、配達に使う自転車のためなら経費にできます(どちらも10万円未満なので、買った年に全額を消耗品費として計上できます)。何が経費になるかは経費にできるもの・できないもの一覧にまとめました。スーパーバルブへの交換で対応する方法もあります。どちらか一方で十分です。
! ぶっちゃけ言うと — パンクで本当に失うもの
走っている側の実感で書きます。
- 痛いのは修理代ではなく、その日の売上です。チューブ交換5,000円は確かに痛いですが、もっと痛いのは「稼働できるはずだった半日」のほうです。ピークタイムに動けなかった日の損失は、修理代よりずっと大きくなります。
- だから「その場で直して続ける」より「早く切り上げる」ほうが、結果的に得なことが多い。焦って走り続けても良いことはありません。パンクしたまま走ればタイヤやホイールまで傷めて、修理代がさらに上がります。
- 空気入れは、家に1本あるかどうかで差がつきます。「近所のスタンドで借りればいい」と思っていると、結局は月に1回も入れません。玄関に置いてあって、出かける前に30秒で触れる——この状態を作れるかどうかです。
- 「入れているのにパンクする」人は、たいてい測れていません。英式バルブの話を知らないまま何年も乗っている人はとても多いです。1,000円かからない部品で解決するので、ここは早めに手を打つ価値があります。
- そして、パンクはゼロにはなりません。毎日何十キロも走り、段差を何十回も越える乗り方をしている以上、いつかは来ます。目標は「起きない」ではなく「起きる回数を減らす」と「起きたときに慌てない」。この記事の前半を一度読んでおくだけで、当日の動きはかなり変わります。
- 自転車で続けるか、原付やバイクに乗り換えるかを考えている人は、パンクの頻度も判断材料のひとつです。自転車で配達を始める記事に、費用と乗り換えどきをまとめてあります。
直す費用より、入れる習慣のほうが安い
後輪のチューブ交換は部品代を入れると5,000円前後。空気入れとアダプターを揃えても、その1回分とほぼ変わりません。しかも空気入れは何年も使えます。どちらも仕事の道具なので経費にできます。
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