配達で壊れるのは腰・ひざ・足|負担を減らす持ち方と道具
配達を辞める理由で、意外と多いのが「稼げないから」ではなく「体が持たなくなったから」です。
この仕事は、同じ動きを毎日何百回も繰り返します。1回の負担が小さくても、100件やれば100回。それが半年続けば、どこかに必ず出ます。
そして厄介なのは、壊れてから休むと収入がゼロになることです。会社員のように有給はありません。だから「痛くなってから対処する」ではなく、「痛くなる前に負担を減らす」しかない。
この記事では、厚生労働省の指針にある「持ち上げていい重さの目安」と、階段の下りで膝にかかる力という2つの数字を軸に、今日から変えられることをまとめます。
1 配達で壊れるのは、だいたいこの3か所
走っている人に聞くと、痛くなる場所はほぼ決まっています。そして3か所とも、原因は「動き」ではなく「回数」です。
腰
荷物を持ち上げる動きが原因。特に荷室の奥から手前に引き出すときが危ない。前かがみのまま腕を伸ばして引く姿勢は、腰にいちばん負担がかかります。軽貨物・宅配に多い。
足(裏・かかと)
歩く距離と、靴が原因。1日2万歩を超える人も珍しくありません。合わない靴やへたった中敷きのまま走ると、足裏からふくらはぎ、膝へと順に来ます。
この記事で扱うのは「予防」だけです。すでに痛みがある場合、原因は人によって違います。2週間以上続く痛み、しびれ、力が入らない——このどれかがあるなら、まず整形外科を受診してください。道具でごまかして走り続けるのが、いちばん高くつきます。
2 腰 — 「体重の40%」を知っているか
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」には、人力で持ち上げていい重さの目安が書かれています。ここを知らずに走っている人が、ほとんどです。
女性:24%以下
では、どう持つか。指針にはやり方まで書かれています。膝を使うかどうかで、腰にかかる力はまるで変わります。
膝を伸ばしたまま、上体を曲げる
荷室から荷物を取るとき、立ったまま腰だけ折って手を伸ばす——この姿勢です。指針では「両膝を伸ばしたまま上体を下方に曲げる姿勢を取らないように」と明記されています。急いでいるときほど、これをやります。
片足を前に、膝を曲げてしゃがむ
片足を少し前に出し、膝を曲げてしゃがむように抱え、そこから膝を伸ばして立ち上がる。あわせて荷物を体に近づけること、持ったまま腰をひねらないこと、息を止めずに腹に力を入れることも指針に書かれています。
いちばん効くのは、荷物の置き方を変えることです。奥にある荷物を前かがみで引き出す動きが、腰にとっていちばん悪い。配る順の逆に積んで、手前から取れる状態を作っておくと、この動作そのものが減ります。車内レイアウトの記事に積み方をまとめました。持ち方を鍛えるより、持たなくていい形を作るほうが早いです。
3 ひざ — 階段は「下り」のほうが効く
階段は上るほうがきついと感じますが、膝にとっては下りのほうが負担が大きいとされています。
これを配達の数字に置き換えます。エレベーターなしの記事で書いたとおり、共同住宅の階段は建築基準法施行令の基準から1フロアおよそ17段。3階まで上がって降りれば、下りだけで34段です。体重65kgの人なら、1段ごとに200kg前後の力が膝にかかる計算になります。それを1日に何十回。
現場でできることは3つです。①手すりを使う(そのために片手を空ける=荷物をまとめて持つ) ②段を飛ばさない ③かかとから落とさず、足裏全体で着く。どれも「速さを捨てる」話に見えますが、膝を痛めて1か月休むほうが、はるかに遅いです。
4 道具で減らす — ただし使い方を間違えない
持ち方と段取りを変えたうえで、道具で底上げします。買うのは2つで足ります。以下は執筆時点で販売ページに記載されていた内容で、価格・仕様は変わります。
働く人向け 腰サポーター(二重加圧式・メッシュ)
配達で選ぶときの条件は「薄いこと」と「蒸れないこと」です。ぶ厚いものは車の乗り降りで引っかかって、結局つけなくなります。そして夏は汗で蒸れるので、メッシュでないと続きません。
二重加圧式は、締める強さをその場で変えられるのが利点です。重い荷物のときだけ強く締めて、移動中はゆるめる——この使い分けが、次に書く「つけっぱなしにしない」に直結します。
サイズ展開があるので、必ず自分のウエストを測ってから選んでください。
アーチサポート インソール(理学療法士監修・片足約25g)
靴そのものを買い替えるより、まず中敷きを替えるほうが安く済みます。1,980円で、履いている靴がそのまま使えます。
配達は1日2万歩を超えることもある仕事です。着地の衝撃は足裏から順に上へ伝わるので、ここで少しでも吸収させておく意味はあります。片足25gと軽いので、入れても足の重さがほとんど変わりません。
「へたっているかどうか」は見れば分かります。今履いている靴の中敷きを抜いて、かかとが薄くなっていたら替えどきです。
※ここで紹介しているのは、負担を軽くするための道具であって、治療のためのものではありません。痛みや不調があるときは自己判断せず、医療機関で相談してください。効果の感じ方には個人差があります。どちらも仕事で使う道具なので経費にできます(経費にできるもの一覧)。
! ぶっちゃけ言うと — 体は替えがきかない
走っている側の実感で書きます。
- いちばん効いたのは、道具ではなく積み方でした。ベルトもインソールも意味はありますが、「奥から前かがみで引き出す回数」を減らしたときがいちばん変わりました。道具は最後の底上げです。順番を間違えないでください。
- 「まだ大丈夫」がいちばん危ない。体は、限界の手前で急に痛くなるのではなく、じわじわ来て、ある日動けなくなります。「なんとなく重い」が2週間続いたら、それはもう前兆です。
- 休むのが最大の対策、というのは分かっています。でも個人事業主は休むと収入がゼロになる。だからこそ「1日休む」より「毎日5%減らす」ほうが現実的です。手すりを持つ、膝を曲げる、荷物を体に近づける。1件あたり数秒の話です。
- ただし、痛みが出たら道具でごまかさない。ベルトを締めて走り続けて悪化させると、結果的に1か月休むことになります。1日休んで病院に行くほうが、圧倒的に安い。労災の特別加入に入っておくと、働けない期間の補償が出ます。
- そして、体だけは替えがききません。車は買い替えられるし、スマホも直せる。10年続けたいなら、いちばん大事な設備は自分の体です。点検の対象に入れてください。
持ち方を変えて、道具で底上げする
順番は①積み方を変える ②持ち方を変える ③道具を足すです。道具から入っても効果は限定的ですが、①と②をやったうえで足すと変わります。どちらも仕事の道具なので経費にできます。
— 腰・ひざ・足のために実際にやっている対策(道具・持ち方・休み方)を募集中。フォームから投稿できます(承認制)—